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茶遊記

小さな頃夢中で読んだおとぎ話も今ではどんな話だったのか曖昧なものが多い。

桃太郎や赤ずきん、浦島太郎はなんとなく起承転結のあらすじを覚えているが、金太郎や小公女は大分朧げだ。西遊記もそんな朧げなもののひとつ。三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄。登場人物だけはしっかりと覚えているのだけれど、はたして彼らがなぜ一緒に旅をしてどこに、なんのために向かっているのか、肝心のところは全く覚えていない。

なぜ急にそんなことを思い出したのかというと、先日「茶遊記」という催しに立ち会ったからだ。「西遊記」にひっかけて命名された「茶遊記」という催しは、読んで字のごとく、お茶で遊び、その魅力を行く先々で伝えていく旅のこと。茶人たちが旅をしながら、土地と出会い、人と出会い、共に場を囲み、お茶を飲む。茶を持ち、西遊記のように旅をする。去年は滋賀で、今年は熊本で、そんな旅の途中に立ち会えた。

茶会とは風景をつくることなのだなあ、としみじみと思った。

玄関先で、食堂で、茶室で。三者三様の風景。

見慣れた泰勝寺という場所に新たな風景が生まれた瞬間の静かな喜びは言葉にしがたい。3席、それぞれの風景を巡りながら旅にでる。始まりと終わりは銅鑼の音が告げる。ゆっくりと夢から覚めるお客さまの顔がいまもはっきりと目に焼き付いている。

西遊紀は、要約すると様々な敵と対峙し、苦難を乗り越え天竺を目指してお経を取り行くための旅物語、だそうだ。なんと14年もの長旅。茶遊記は2013年に始まり、この旅路はまだまだ続くのだろう。また旅の途中で、愉快な仲間の皆さんに出会えたらいいな、と切に思う。

平山千晶

料理家・細川亜衣の主宰するtaishojiに勤務。 街中から車で15分ほどとは思えない静かで自然豊かな場所にあるtaishojiでの日々は発見の連続。

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