キッチンと本棚。
誰かの家にお邪魔すると真っ先に垣間見たくなる。
私にとっては、それが、キッチンと本棚。
春、畑が少し眠っている間に、いつもお世話になっている農家さん宅に遊びにいかせてもらう。
自分が好きな人たちのキッチンはもちろん各家庭で全然異なるのだけれど、共通しているのは気持ちよく使い込まれていて、心地よい風と光が通る、ということ。
どこに行っても言われない限りはそこまで手伝うこともなく(もちろん言われたら何の手伝いだってするけれど)、特等席に座って料理が出来上がる様子をぼんやりと眺めるのが好き。
ついその少し前まで畑にいた子たちを優しく連れ帰り、流れるようにその日の食事が出来上がっていく過程を見る度に、畑はキッチンの一部なのだなあ、としみじみと思い知る。彼らのキッチンはどこまでもぐんぐんと気持ちよく広がっていくのだ。
シンプルで何も不足していない。
彼らの暮らし、そのものの味を噛み締めながら、日々が何より尊い、と心の中で祈りたいような気持ちになった。