一般の方で建具の種類をしっかり呼び分けられる方は少ないように思えます。
一般にすべて「ドア」と括られることが多いのですが、この業界で仕事をしていると、「ドア」というのは「片開戸」を示しているような気がします。
日本では昔から引戸が主流で、とても重宝がられますが、海外では珍しく、フィンランドの著名な建築家アアルトは日本の引戸に感銘を受け自らの建築にも引戸を多用したようです。
そういう意味でも「door=ドア」は「片開戸」を示していると日本の建築業界では認識されるような気がします。
引戸は空間を仕切りたいときはしっかり仕切れ、繋げたいときは繋げられる非常に機能美のあるものだと思います。
昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長期に入り住宅需要が一気に膨れ上がり、供給が間に合わず、混とんとしたなかで輸入材を多用した洋風住宅があふれた結果、ドア中心の家が主流になってきたように思えます。
昭和30年代40年代に住宅を建てた方々の話を聞くと、口々に「夫婦共働きでとにかく忙しく、工務店任せ、大工さん任せ、ハウスメーカー任せで建てたから、自分たちの意見なんか全く反映されてません。」と言われます。
しかし、最近は引戸の良さが注目され、「すべて引戸でお願いします」とリクエストされる方が増え、建材メーカーでも引戸のバリエーションが増えてきたように思います。
一昔前はなかなかなかった「引込戸」もラインナップに登場しています。
今回、「下硯川の住宅」では写真の3枚引戸を造りました。
樹種はスプルスを使っています。
スプルスはマツ科の樹で白く繊細で細く美しいことから好んで使う樹種です。
家全体が柔らかく明るく軽やかな空間になっています。