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3分だけ、かつお節を削る時間

「木のあるくらし」とはちょっと違うのですが、ぜひ知ってほしい世界があります。

それは、「海のあるくらし」。

というのも

鰹節(かつおぶし)って、削ったことありますか?

削られた便利なパックをスーパーで買うのが、今のくらしとしてはふつうのことと思います。

我が家もそうでした。

でも。

自分で削ると、全然違うのです。

香りが。味が。ぜんっぜん違う濃さ。旨味がすごくて、舌が大喜び。

それを煮出した美しい出汁は、日仏合作映画で「千年の一滴」と呼ばれています。

日々の簡単なところでいうと、

ざる豆腐の冷ややっこに、薬味と一緒にふわっとかけてみたらいい感じ。

さっと湯がいたオクラに、しょうゆと一緒にまぶしてみたり。

お好み焼きや焼いている間に、子どもに削ってもらって、それを焼きたてにかけると最高。

何なら、削りたてをちびちび、一杯やるのもいい。

今日ちょっとほしいなって時に、ほんの数分削るだけだから苦にならない。

そんな旨味ある生活に足を突っ込んでしまったのは、

「化粧ポーチを忘れようとも、手のひらサイズの削り器をカバンの中に持ち歩いている」という、
削ラーと呼ばれる一人の女性との出会いでした。

自分の趣味で、枕崎のかつお節と削り器の良さを、出会った人に伝え歩き、
2000個以上の注文を受けたという伝説の人。

彼女に削ってもらったかつお節が美味しく、そして手のひらサイズの削り器がかわいく、
まんまと購入しました。

ちなみに、この「削る」という行為。

ちょっとイライラする時とか、何かに疲れてる時とか、おすすめです。

シャッシャッという小気味良い軽やかな音と、
自分の手が削っているという確かな指の感覚だけに集中する。

精神統一になるというか、無になれる時間です。

実体験として。

出産後、家にこもって気分が陰鬱としているママなど、やってみてほしい。

子どもが昼寝したスキにひたすら削っていたら何だかスッキリしていて。

手を動かし、成果物を作り、
思い通りにならない育児ではなかなか到達できない「達成感」を得られる喜び。

しかも、できた成果物は離乳食の出汁として安心。

出汁をとった後はおかかしょうゆマヨにしてごはんのお供に。一石三鳥。

そして何やらブツブツ言いながら削る母の、その背中を見て育った子は、

3歳になると「ぼくも削る」と言い、削ラーのところに修行にいきました。

師匠が削ったそばから、むしゃむしゃと食べる本能の塊。

小国町では彼女の長年の削ラー活動が認められ、
地元保育園では子どもたちがかつお節を削り、味噌玉を作るという体験が採用されています。

本能で「おいしい」を感じる彼らは、シンプルな出汁を、ごくごくと飲み干し、目をキラキラさせるそうで。

味噌汁にすると、普段は食べない野菜を食べた!などなど、大人もびっくりな展開に。

食の体験は、イチコロですよね。ずるすぎる。

購入はこちらの、削ラー公式サイトからどうぞ。

https://kezuler.jp/

カンナや彫刻等で、木を削るのがとても楽しいというお話を以前お届けしたのですが、

木のカンナ屑も、かつお節も、薄く削ったものはぱっと見似ている。

削りたての香り高いところも似ている。

海のものと山のものなんだけど、実はつながっている。

次回はそんなお話をお届けします。

入交 律歌阿蘇小国杉のくらし 企画係

森のこと、木のことが好きすぎて、熊本の端っこ小国町に移住。SNSなどで林業母子として3歳児と共に木のあるくらしを発信中。昼は小国町森林組合というゴリゴリの山の職場にいます。

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