実は最近、とある嬉しきスポットで、あまりにたくさんの食材を買い込んだのです。
・・・と、なんだか匂わせ気味なことをここに書いても誰のためにもならないので、きちんと書いておくと、藤崎宮近くにある『タージ』というカレー屋さんにようやく行って、大量のカレースパイスを買ったんです。ここは熊本のカレー好きならもはや外せない激しいスパイシィスポットであり、そこで食べるカレーもさることながら、多種多様なカレースパイスを買えることで知られた店、ですよね。
以前から何度も話だけは聞いていたのだけど、ようやく先日行くことができて、あまりの嬉しさに歓喜したというわけで。ええとね、例えば、マスタードオイル。カレーマスターで知られる・・・いやいやタブラ奏者であるユザーン師匠が書いた『ベンガル料理はおいしい』という本を持っているのですが、そこでは多くのレシピでこのマスタードオイルが使われているんだけど、なかなか探しても無くて。ようやく見つけました。さらに例えば、タマリンド。この酸味を出す果物もなかなかそこらのスーパーにはありませんが、ここではまるで八丁味噌のような装いで当たり前のように売られていて、思わず即買い。お湯で溶かし込んでこっそり使っては、家族から早くも怪しまれているところであります。
でもそこにはスパイスだけではなくて・・・そう、あまりに多種のビーンズ、豆があったのです。いや、もう、これにはマジでさらに歓喜しましたね。
以前から豆を食生活にもっと取り入れたかったのだけど、どうも量が少なかったり、なんだか値段的にも高く感じたりして、普段の生活に取り入れられる感じではなく。しかしここにはあまりにたくさんの種類の、そしてたくさん量の入った豆が、良心的な価格で売られていました。
というわけで、どうやらここから我々の豆豆しい生活が始まるのです。
朝起きては、いや寝る前には、いやいや出がけには、結局いついかなる時でも、豆の入ったタッパーをおもむろに開け、「ワシっ」と適当に手掴みしては容器に投げ入れ、多めの水を適当に入れておく。つまりは豆をもどすわけですが、何より嬉しいのはこの戻し水さえダシになること。なんだかここが勝手にトクした感じで嬉しい。
こないだ偶然出来て美味しかったのは豚肉と豆のシチュー(のようなもの)。たまたま奥さんが豚のバラ肉を圧力鍋で煮ていたので、「ちょっと、まめっ!」と場を制し、戻した豆を水ごと入れてさらに煮ると、豆がいい感じでホロホロに崩れて、勝手にシチューのようなものになってしまう。つまり、お豆さんは溶けるといい塩梅にトロミをもつけてくれるわけですね。野性的で直情的な肉の煮汁を、あくまでこっくりと優しく包み込むようにフォローしては、うまく溶け込んで豆豆しくマリアージュさせてくれる我らがお豆さん。なんて素晴らしい脇役、バイプレイヤーなんだろう。とどのつまり、お豆さんとは、料理界におけるフィリップ・シーモア・ホフマンのような存在だったのです(亡くなってしまいましたが)。
あくまで腹持ちが良く、栄養価も高い。日本では豆腐というキングが椅子に居座っているからか、どうもつまはじきにされて食卓へ上がりにくいけれど、でも世界的にみるとビーンズってもっと主な気がするし、歴史的にも古い食材。
何より、僕は豆を食べるたんびに、いつだかに観た西部劇を思い出す。ほら、よくありますよね。ペコペコしたアルミの皿に豆のシチューなんぞを入れて、さもうまそうにスプーンでシャクって食べる、荒らしきガンマンの姿が。というわけで、うちの家ではいっときの間は西部劇さながら、豆豆しい料理が食卓に並ぶことでありましょう。それを証拠に、写真は今日の朝作ったソーセージと豆のカレー。うーん、豆豆しい。