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隣りの神様

7月1日におみくじを引いた。

晴れ渡る 月の光に うれしくも 行手の道の さやかなりけり

闇(くら)くて見えない道も月がさし初め 明るくなる如く幸福次第に加えある運ですから

あせらずさわがず静かに身を守って進むべき時に進んで何事も成就すべし

こんなに足繁く通ったことは人生で一度もない、と断言出来るほど、多いときは日に二度も神社へ参り手を合わせる。急に信仰心に火がついた訳ではない。ただ、とにもかくにも近いのだ。半年前に越したマンションから神社は目と鼻の先だった。近所のスーパーに、友人宅に、会社に。どこに行くにも前を通るので、いってきます、と、戻りましたの挨拶を自然とするようになった。

ふと向田邦子の「隣りの神様」というエッセイを思い出す。

私は彼女の大ファンなのだが、確か彼女の青山のマンションのお隣りも神社だった。ただ、彼女は引っ越し当日の夜にいざ参ろうとしたところ、興ざめする出来事に遭遇し、それから7年という歳月、隣りの神様へ拝み「そびれて」いたそうだ。

気がつけば今年も半年が過ぎた。

目の前には夏の気配。熱量を隠しているみたいな静かな朝。

夏の朝のはじまりは早い。夏は早朝に菓子を焼く。

毎日のように足を運んでいる神様へ今日も手を合わせ、数年ぶりにおみくじをひく。毎日通おうが、7年に一度だろうが、ご利益は変わらないのかも知れないけれど、ひさしぶりにひいた神様の言葉は今の私にとって嬉しいものだった。

引いたおみくじは小吉。つい、木に結びつけずに持ち帰ってしまった。

近く結びつけにいこう、と思いながら、まだたまに眺めたりしている。

平山千晶

料理家・細川亜衣の主宰するtaishojiに勤務。 街中から車で15分ほどとは思えない静かで自然豊かな場所にあるtaishojiでの日々は発見の連続。

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