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プロダクツの数だけ記憶がある

以前に紹介した、くまもとの端っこにある、坂本善三美術館というすてきな美術館さんが

またしてもグッとくる企画展を行っています。

モノの数だけドラマがある | くまもとの家と暮らし (kumamoto-ie-kurashi.jp)

世界的に高く評価されている、熊本が生んだ「グレーの画家」坂本善三氏。

今回の企画は。

善三先生の作品群の中から、地元の人々が「あっ」と思った作品を選び、

そこから受けたイメージや感動、衝動などをそれぞれの得意技をもって膨らませ、

「プロダクツ」という形で表現するという、すてきすぎるアートの場です。

アートの場なんですけど、アートというものは特別であって、特別ではない、

くらしの中の所作や道具からも生まれてくるものなんだなというのを感じられる場になっています。

ある人は、善三先生の絵画に描かれた魚を見て、

子どもの頃に行ったお祭りで食べたサバ寿司を思い出し、会場の色とりどりのあかりを飴玉で表現したり。

ベテランの職人は、先生が執筆活動中に座っていたであろう、書斎のデスクを設計したり。

服飾を得意とする方は、石垣と表現される絵を、やわらかな布のはぎれで組み上げたり。

捉え方も、表すことも、とても、自由なのです。

小国という町は、小さな国という名の通り、小さな小さな町なのですが

企画展しますよーという学芸員さんの呼びかけで、さらっと30組を超える方が集まり、

さらっと、かつ情熱的に、愛を込めて、モノを生み出せる人がたくさんいます。

出展者は、旅館の調理長やお菓子屋さん、布やアクセサリーの作家さん、デザイナーに地元の高校まで。

福岡からアパレルブランド「TIGRE BROCANTE」も堂々の参戦です。

愛されてるなあ、善三先生。

都会ならふつうかもしれないけど、森の奥深くの小さな町で、これだけのエネルギーがわいてるなんて。

小さな距離で、小さなサイズで、ぜひ感じにきてください。9月5日までです。

木工職人のみなさんも腕をふるって作品を仕掛けていますので、「木のあるくらし」もたくさん味わえます。

そう思うと。

家づくりも、どこかで「あっ」と思った要素が、たくさん散りばめられているプロダクツで、

家を建てるお施主さんたちは、そのプロダクツの表現者ともいえるのではないでしょうか。

憧れのあのメーカーさんの設計デザインを見て。

友人の家で、これ使いやすいな、と気に入った間取りを見て。

そこに、

隠れ家にしていた実家の屋根裏に潜り込む時の気持ちや、

大好きだったおばあちゃんちの縁側のひなたのにおい、

母が庭から野菜を摘んではサンダルで入ってきた勝手口の、そのちょっとした高さ。

そんな記憶が合わさって、きっと家は生まれていく。

家を作る時間というのは、昔と比べてずいぶん短くなっていますが、

どうか、バタバタの波に飲まれず、そういう記憶と向き合う時間を持って、

生み出していってもらえれば。

完成された家は、一緒に住む次世代の子どもたちの、記憶の元になる作品ともいえるかもしれない。

すてきなつながりですよね。

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プロダクツで作る善三展
2021.6.19-9.5
9:00-17:00
坂本善三美術館
https://sakamotozenzo.com/
休館日などは公式サイトをご確認ください。コロナが広がったら休館になりますのでご注意。

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入交 律歌阿蘇小国杉のくらし 企画係

森のこと、木のことが好きすぎて、熊本の端っこ小国町に移住。SNSなどで林業母子として3歳児と共に木のあるくらしを発信中。昼は小国町森林組合というゴリゴリの山の職場にいます。

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