もうすぐ、桜の季節です。
じわじわと噛みしめる別れの季節。
お世話になったあの人に、子どもたちの卒業制作に、
そんなお問い合わせが続々と届いています。
木でできたものって、日頃そんなに買う機会はないと思いますが
この時期になると、地域のいろんな人からご相談がある。
木は大切な日に選ばれてきたものなんだなと、この町に息づく文化を感じます。
私にも、この春、旅立ちを見送る人がひとりいます。
小国生まれの高校生。
自分を表現するアートから地域の産業まで、色々なことに興味津々のその人は
とても眩しい存在でした。
大学生になって、この町を離れる日まであと少し。
最後にお話できる機会をもらったので、
生きること、暮らすことの基本である「食」に困りませんようにという願いを込めて、
小国杉のお皿とお箸を贈ることにしました。
学生さんなどと、木のことや地域のことをお話する際に、伝えることがあって。
社会って、日々の暮らしをしている、名もなきふつうの人たちの仕事でできている。
見えないところでがんばっている、生産者や技術者の仕事の重さを見ておいてほしい。
現場を軽く見て、自分たちのチームだけで「やったね!」っていうのは、めぐりめぐって、
やがては自分が値打ちを叩かれる側になるから気を付けて。
これらは、私が社会に出て肌で感じ、自分に言い聞かせている言葉でもあります。
同じように、家づくりって、あらゆる素材や技術の結晶だと思うのです。
安易に値切るということは、関わる人の仕事を安く見ることで、結果、産業の力を低くしてしまう。
大切な日に、大切なものを選ぶことができるのは、みんなのおかげ様ということを忘れると
将来働くようになった子どもたちに、
私たち大人が現場の価値を軽く見たツケがまわってくると思っています。
イエクラさんでブログを書かせて頂いて、1年間。48回。
私もこれにて担当を卒業します。
みなさんの家づくりをそっと支える樹々や、暮らしを守る森、そして技ある人たちとの
新たな出会いの春となりますように。
ありがとうございました。