実家へ帰ると、小さい頃には分からなかったあれこれが目に入る。それは、丁寧に額装された絵だったり、毎日手入れされている花々だったり。
その中でも一番感動的だったのは、家に入ってくる光だった。暗くて古くて昭和でお洒落な様子が微塵もないと感じていた台所には、食べものが輝いて見える時間帯があり、湯気が上がる様が天国のようだった。まるで光の道のように照らされた廊下は、ミシミシと音を鳴らす古ささえも愛しさを感じた。
冷たく古臭い日本家屋だと思っていたのになぁ。見た目に明るい家だけが明るいんじゃないんだと私は知った。いつでも帰ってきたい場所が、光で包まれていて、よかった。
知人に「檀一雄さんのキッチンを彷彿とさせる」と言われたキッチン。レンガ壁のL字型で、ここで作る母の料理がいつも美味しい。好物は筑前煮と卵焼き。
執筆者・大塚 淑子 Otsuka Yoshiko
1985年生まれ、福岡県八女市出身。「タウン情報クマモト」「別冊モコス」の副編集長を務めた後、2019年夏よりフリーの編集者・フォトグラファー・ライターとして活動中。
*『くまもとの家と暮らし』01(2020年1月25日発行)の記事より再掲載しました。