家で過ごす時間が多い日々ですが、窓を開けると心地よい風が吹き込んできて、初夏を感じる季節となりました。最近は暑さも増し、いつの間にか「夏」になったような気さえします。
本来ならお出かけをして、屋外でのレジャーや行楽を存分に満喫したいところ…少しずつでも日常を取り戻しながらも、気をつけて過ごしていきたいですね。
さて、この季節のような心地よい気候にピッタリの言葉で『五風十雨(ごふうじゅうう)』という四字熟語があります。中国の思想書『論衡』に収録されている「是応」から出典されたもので、
五日にして一(ひと)たび風ふき、十日にして一たび雨降る
の略です。
五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降るという意味で、順調な天候で農業に都合が良いことを例えています。
特に今の初夏を指す言葉ではありませんが、そろそろ田植えの季節。農家の皆さんはトラクターで田畑を耕したり、田植えに向けて田に水を張ったりと準備をしている頃です。梅雨の前になんとか田植えや苗付けを完了させたい。まさに今の気候の良い時期は、農作に都合が良い“五風十雨”な季節なのです。
また、五風十雨にはもう一つの意味があります。天候が良く農作も順調、豊作になるということは世の中が平穏である、ということから「世の中が平和で泰平なこと」。
いつもと変わらずに植えられている水田の稲や、元気に育つ花や野菜。普段は何の気もなしに見ていたかもしれませんが、今年はなんだか、緑豊かな風景に気持ちがほっこり穏やかになる気がします。
五風十雨の風や雨は、平穏な日常への前触れとなるかもしれません。家の中に居ても、晴れた日は窓を開け放って心地よい風を感じながら、雨の日はゆっくりと本を読んだりDVD鑑賞をしたり音楽を聴いたりと……いつか訪れる日常に向けて、心穏やかに過ごしたいですね。
参考文献
『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版