それはいつも丁寧にしまわれている。出番が来ると、桐箱からメロンを取りだすように、木箱からウニをすくいあげるように。それを包んである紙はそうっと剥がされ、ダイニングテーブルに置かれる。
なじみのワインバーで使われていたものを気に入り、同じものを購入した。たまの「おうちワイン」用にと買ったものだったから、こんなに登場回数が多くなるとは予想していなかった。この春までは。お気に入りのレストランにもオープンを待ち望んでいたバーにも、随分と長い間行けていない。もちろんこれは、赤も白もロゼもしゅわしゅわも、ぜんぶ美味しくしてくれる魔法のグラスなんだけども。
すっかりお尻の形になじんできているダイニングチェアに座り、またあなたと、みんなと、お店で乾杯できる夜を想う。
執筆者・福永 あずさ Azusa Fukunaga
熊本市在住のフリー編集者・ライター。本誌特集「旅をする花」を担当しました。コロナ禍真った だ中の取材・撮影となりましたが、快くご対応いただき本当にありがとうございました!花屋ラブ。
*『くまもとの家と暮らし』02(2020年5月25日発行)の記事より再掲載しました。