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【IE・KURA COLUMN】夏の亡霊。

特集の取材で伺った平田チカコさん(p15で紹介)の食のルーツは、ご自身のおばあちゃんの味。自営業で忙しい両親の代わりに、安心・ 安全な手作りの料理とおやつで育ててもらったと話してくれた。(だくさんの豚汁と、すみわたる紫蘇ジュースの味は、こころがほどけていくように美味しかった)

祖母と暮らした経験はなく、専業主婦だった母こそがわたしにとっての家庭の味ということになるのだが。とっくに鬼籍に入ってしまった母に、我が家の味を尋ねることはもうできない。家事を手伝ったことはほとんどなかった。今こそ、あの頃聞いてもわからなかった、うちの味噌や、米や、調味料のはなしをしたいと思っても、もうわからないままだ。

取材終盤、部活から帰ってきた娘さんとキッチンに立つチカコさんの姿を眺めていると、茶碗ひとつ洗わない女子高生だったわたしの亡霊があらわれた気がした。

お野菜ごろごろだし、じんわりヘトヘトな夏のこころとからだ をすっくと立たせてくれたチカコさんの味噌汁。これを毎日食べ られる平田家の皆さんがうらやましい。

執筆者・福永 あずさ Azusa Fukunaga
熊本市在住のフリー編集者。本誌特集「食卓はうたう」を担当しました。新しい日常だからこそ、生活が大事。食事が大事。大切な人と囲む食卓という宇宙を、うたうように楽しめたらいいね、という気持ちをこめて。

*『くまもとの家と暮らし』032020925日発行)の記事より再掲載しました。

家と暮らし編集部

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